Column
フィロソフィー本
2026/5/8
フィロソフィー本に触れる
近畿(滋賀県)にある小売り流通企業様の案件に関わらせていただいた時のことです。
とても優秀なコンサルタントとやり取りをさせていただきまして、本件の実施に至りました。そのコンサルタントは本件の与件の整理から実施に至るまでの間かなりの熱量を持っており、お客様から絶大な信頼を得ておられました。そのような方から当社にお声がけ下さりとてもありがたく思いました。
お客様が実施されたい研修のご要望は若手を対象にした【キャリア教育】と会社の【フィロソフィー】を掛け合わせてほしいという内容でありました。
世間一般の「キャリア教育」はVUCA時代の中、自身のキャリアと会社の理念をどう照らし合わせて融合させていくか、強みをどう活かしていくのか?
という、定番の内容が主流であります。これまでも数々の取り組みを拝見してきましたが、久々に触れたこの案件のコンセプトやアプローチは一味違い、大変心を打たれました。
代表自らが従業員に発信
少し、この研修の実施に至るまでの背景にも触れていきます。【三方良し】という言葉があります。(まさに土地柄も近江商人ですからこの土地が出発点ですね)
売り手良し 買い手良し 世間良し

常々従業員のことを第一に考え、それに加えて、お客様や会社の在り方における精神や心遣いを貫いて来られました。
この企業の代表は、まさに京セラフィロソフィーで有名な稲盛(和夫)氏の塾生として経営学を学び、その実体験と学びをご自身が築き上げた会社や従業員の皆様に還元し続けてこられました。
現代では、様々な企業にて自社の存在意義を【パーパス】と表し、浸透されていますが、この企業様は、はるか昔から自分たちの存在意義をはっきりと定義され、今後100年続く企業を目指すために代表自らが何度も幹部を集めては想いを馳せ、理念や心構えを伝え続けてこられたそうです。
そして、その理念に共感した社員が自ら現場で体現することで、パートやアルバイトを含む従業員にまでその想いが伝染し、今では約2万人近い従業員の上場会社へと躍進を遂げてきたのです。
大きな出来事が会社を動かす…
しかし、残念ながら突然代表がお亡くなりになります。代表は現場をとても大切にされていた方でありました。代表から直接教えを受けていた社員、従業員は計り知れなく、大変悲しみに包まれたとお聞きしております。

この想いを形骸化するわけにはいかない!
その後、人事や幹部を中心に集い、これまでの代表とのやりとり、思い出、考え方、語録など、それを今後の次世代でどう体現していくのか、1冊の本にまとめることになりました。
社員自らの手で会社のフィロソフィー(DNA)を解釈し直し、そして新しいメンバーに伝承していく…それには相当な時間と労力がかかったと思われますが、渾身の1冊となったのです。
私自身、かつて様々な企業のフィロソフィー本を拝見してきましたが、このパターンで作成されているフィロソフィーブックは初めて拝見しました。
この本のすごいところが、
① 従業員がそれぞれの職場で代表の教えを大切に守り、体現してきた軌跡が言語化されている点
② そして、次世代にどのような在り方が必要かを、まるで代表とプロジェクトチームが時間を超えて一緒に作り上げたかのような一冊に仕上がっている点です。
想いを【みんな】で形に!
仮に、プロジェクト側で解釈や考え方が間違っていたら会社そのものの文化が全く違うものになってしまいます。
また現場に則した内容である必要もあるため、現場の細部まで調べ上げ、代表が残してくれたメッセージや文化を探されたとお聞きしています。これだけ多くの従業員がいる企業様なので、考え、想いが何百、何千もあったかもしれません。単純に書籍にしたら1,000ページくらいになるかもしれません。
ただ、理念は読まれなければ(伝わらなければ)意味がありません。理解されるような内容でなければ意味がありません。150ページ程度にまとめられ、ソフトカバーで単行本のように手に取りやすく、そして書き込めるように余白が多くありました。多すぎず少なすぎず、いつでもふと顧みることができる一冊であります。
ここに至るまで大変なご尽力だったと思います。
事例も踏まえてまとめ上げられた珠玉のキーワードの数々は、まさに有名なクラシック音楽のキーフレーズが現代になっても、流れ続けるように、見事に伝わりやすく集約されていました。
さらに、その内容は、全く業種の違う人が読んだとしても、別の会社で勤めていたとしても、全ての社会人にも通じるマインドやスキル、仕事の捉え方について記載されており、まさに研修会社のバイブルを読んでいるようでした。
現代の社会では当たり前のように使われるような内容が、何年も前から先代が自らご経験されたことを想うと、何よりもその言葉の解釈に深みと説得力を感じられます。
最後の締めくくりも従業員のしあわせ
そして、何よりもこの本の素晴らしいところは、最初から最後まで従業員が第一であることを一貫して大切にされている点でした。
よって、今回のキャリア教育でやることはとても絞られており、これまでの従業員の仕事や取り組みをしっかりと労い、棚卸しをして、フィロソフィーと自身の今後を融合していく手助けをすることでありました。この手の研修は形ばかりの無難なアウトプットに終始しがちですが見事に皆さん会社のためにどう貢献するか思いを馳せていらっしゃいました。
色々なキャリア研修に触れてきましたが、エンゲージメントが高く、フィロソフィーを大切にされる社員で実施したことは初めてでいろいろな発見がありました。大変感謝しています。
ふと思ったのですが、もしかしたら、1社目からこの会社しか経験がない従業員にとってはこのフィロソフィー本の【真の良さ】に気づくのは難しいかもしれませんね。
というのも、入社1社目の時からこういう理念があるのが「前提」にあるからです。
私たちのように他社を見た時、又は他社から見た時に、初めてこのフィロソフィーの価値がわかると思います。ですので、人事部の皆様や私たち外部の機関にて、【どれだけこの書籍の内容と取り組みの良さがあるのか】を伝えていくことは重要なのだと思いました。
ちなみに、この書籍の最後に、これらの取り組みは全従業員の考動の原本です。このように記されていました。
まさかこんなところで【考動】と文字に出会うとは…とても親近感がわきますね!ますますの発展を願っています。